読録日誌

僕が読んだおすすめの書籍の書評を掲載します。毎日10冊以上の本を少しずつ、iPadのKindleアプリで読んでいます

「意識の量」を増やせ!〜日々の生活の中で「気づく」ために

「意識の量」とはなかなか聞き慣れない言葉である。齋藤孝氏による「『意識の量』を増やせ!」を読了した。いかにもな新人社会人や、著者が指導を担当している学生などが、例の中で取り上げられていて、「これは新社会人 or 学生向けなのかな?」と読み進めた。すると、普段の日常生活では、それこそ「意識をしていない」「意識の量」についてカジュアルにまとめられていた。社会人経験10年以上、三十路半ばの僕であっても、教訓となる箇所がいくつもあった。若い人向けの書というわけでもなく、仕事やプライベートを充実させたいと思っている方、全てにオススメ出来る良書だ。

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意識の量を増やす=気づくことと捉える

冒頭、齋藤孝氏が「意識の量が足りない」例として以下を挙げている。

  • ミーティング中にボーっとしている
  • 仕事の効率が悪い
  • 相手が傷つくことをサラリと言ってしまうが、自分では気づいていない
  • 年上に馴染めない
  • 話し掛けても、気持ちのこもってないような返事をする
  • etc.

いわゆる、ゆとり世代が社会に出て、「彼らはこんな感じなんだよ...」と著者が愚痴をたれているようにも感じられた。しかし、ゆとりじゃなくとも、自分自身の問題として捉えてみることも出来る。

齋藤孝氏が本書で「意識の量を増やす」と言っているのは、より分かりやすく言えば「気づくこと」と言い切れる。朝起きて、ご飯を食べて、歯磨きをして会社へ行く。オフィスについたら、今日一日のタスクを確認して、ひとつずつこなしていく。上司にお伺いを立てて、部下に指示を出す。夜になると仕事を切り上げ、電車に乗って、家に帰る...。そんな日常の中で、「気づく」ための感度が下がってしまい、マンネリ感を感じている人は少なくないだろう。

本書では、気づく=「意識の量を増やす」ためのTipsが、カジュアルに語られている。それぞれの項目は分量が少な目なので、読み進めやすい。

例えば、掃除をすること。自意識が過剰になってしまうと、周りへの思いやりが欠けていることに「気づかない」。そこで、掃除をすれば、自意識を抑えることが出来る。掃除という行為そのものが、心を整えてくれるし、何より身の回りを綺麗にすることは、他人に喜ばれる。毎日行うことで、何かしらの気づきをもたらしてくれる。

掃除が生活習慣を変え、その習慣が意識を広げていくことは、このようにさまざまなところで実証されている。

と著者は述べる。

あえて「意識とは」が語られていない

興味深かったのは、「意識量を増やせ」と唱えているものの、意識とは何か?が語られてはいなかった点である。著者が「あえて」書かなかったのか?否か?は判断出来ない。しかし、そのお陰で、「ここで言っている意識ってどんなことだろう?」と考えながら読み進めることとなった。

脳科学や心理学では「意識」に対して「無意識」が重要なポジションを担っていることが分かってきてる。本書を読みながら、この「無意識」について思いを巡らせるのも楽しい経験である。

相変わらずの「齋藤孝」節

齋藤孝氏が以前書いた「読書力」、「三色ボールペン活用術」などの新書を読んだことがある。本書を含め、いかにも「教育的」であるが、優しい言葉を使って諭してくれる文体は個人的には好きなものである。今や、テレビ番組にも多数出演している齋藤孝氏。彼の著作を読むことは「自分がミーハーである」と感じてしまうかもしれない。実際に僕もそうであった。でも、本書に限らず、彼の著書を読み進めていくと、柔らかい口調の中に彼の「立派な教育者」としての面影を垣間見れる。毛嫌いする必要はないのだった。

日々の生活で「意識の量」を増やす

本書を読んだ後、僕は「背筋が伸びる」ような感覚になった。日々の生活の中で、ふと立ち止まって「気づく」瞬間を増やしていきたい。意識の量を増やすことで、僕らは頭が良くなり、人のことを思いやれるようになるかもしれない。また、自分自身が幸せになるキッカケが作れたらなお幸い。

「意識の量」を増やせ! (光文社新書)

「意識の量」を増やせ! (光文社新書)