読録日誌

僕が読んだおすすめの書籍の書評を掲載します。毎日10冊以上の本を少しずつ、iPadのKindleアプリで読んでいます

21世紀の「裏」ハローワーク〜高城剛があの職業に切り込む

表立って言えない職業がある。いわゆる「裏の」仕事だ。本書「21世紀の『裏』ハローワーク: 人には言えないもうひとつの職業図鑑」では、ハイパークリエイターと呼ばれてから久しい高城剛がそんな職に就く7人の男女にインタビューをしている。「表の」世界にいる人間としては、「知ってはいけない世界」を垣間見れる気がして面白かった。高城剛の会話の持っていき方もさすがだった。

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7人の「裏」で働く人達

本書では、「裏」の世界で働く男女7名と高城剛が対談をしている。以下の通りである。

  1. アイドル
  2. スカウトマン
  3. セクシー女優(いわゆるAV女優)
  4. ホスト
  5. キャバクラ嬢
  6. 闇金業者
  7. 読者モデル

例えば、「1. アイドル」のケースなんかは興味深い。対して売れてなく、テレビに出演をしているわけでもない「アイドルの女の子」なんだけど、ギャラ飲みというものに参加している。夜、六本木や西麻布で開催されていて、こうしたアイドルの子は飲み会に参加することだけでギャラを貰っているらしい。また、運が良ければ、その金額は高額になり、はたまた参加者の男性から高級ブランドのバッグをプレゼントされたり...する。

なんとなくそんな世界があることは、知っていたけれど、実際に「ギャラ飲み」に参加しながら生活をしていた本人から話を聴けるのは珍しいことである。

ドロドロとした欲望が溢れている

上記のアイドルに関わらず、インタビューをした内容からはドロドロとした欲望が溢れて垣間見れる。特に「お金」の話が取り上げられている。キャバクラでのドンペリの値段だとか、人気ホストの最高売上だとか、AV女優の出演料とか、闇金の利息とか...

「表」の人間からしてみれば手の出せない物を、彼/彼女らは身につけ、短期間で獲得する。

7人の中には「裏」の世界を既に引退した方もいるが、こうしたお金や承認欲求に対する強いがある、ということを知れたのは良かった。

高城剛のインタビューが上手い

これらの7人に対して、高城剛の対話が非常に上手だ。

高城剛は僕らと違って、「裏」の世界をよく知っている。だから彼/彼女らに対する頷きや同調が至ってカジュアルなものになっている。

例えば、キャバ嬢やギャラ飲みに参加するアイドルは、高級なブランドバッグなどをプレゼントされることが多いとのこと。それに対して、高城剛は

それで、すぐにコメ兵に持っていくわけでしょ

と切り返す。インタビューの末巻にはキチンと「コメ兵」の解説が掲載されている。「日本最大のリサイクルショップで...」と。

高城剛は本書で、「裏」の職に付く人達から「裏」の事情を的確に引き出している。

「裏」を知ること

例えば、お金の話ひとつ取っても、僕らにとって現実感の無い話でもある。一本30万円もするドンペリを僕らは決して購入しない。とはいえ、世界にはこんな人達がいるんだな、と気付くことは価値があるだろう。本書「21世紀の『裏』ハローワーク」はそんな僕らの知らない世界を「ちょっとビックリしながら」知れる良書である。